南下し南会津は下郷へ。
今回、行き先を福島にした理由の一つ。
3月号のフレスコ便りに載せましたが、スタッフ絹子のおじさんが亡くなりました。
おじさんは木の器を作る木地師で、何年も前ですが店でも器を販売したこともありました。
そんなこともあり、僕は何度もおじさんを訪ねたりしていました。

(以前の写真)
温和で誰にでも好かれる方だったと思います。
だから各地からおじさんに会いに来られる方が多かったんだと思います。
僕もその一人で…。

「伝統工芸、伝えていかないとなあ」とよく言っていました。

手にも心にも温かい器でした。
作業小屋に行っても無人のはずだし誰に会うわけでもないんだけど、すぐ近くにあるお墓参りだけでもと訪れました。
ただ、まだ納骨されていないと少し前に聞いていたので、それも可能かこの時点では不明でした。
あれ?車がある。
誰かいるのかな?
10年間、おじさんに器作りを教わっていた斉藤さんという方がいました。
このままにしておくより、少しでも管理できればと、家族の方と相談して通われているそうです。
「寂しいけど何かできればと思って。息子さんもそうしてもらえたらって。だから鍵だけ預かって使わせてもらっています」
「あの、今日は僕、お墓参りにと思って。おじさんはもうお墓に…」
「数日前ですね」
「そうなんですか。それじゃあ、ちょっと行ってきます」
「それでは私も一緒に。私も行ったことないんですよ」
「坂を上がれ分かるってうちのスタッフ…、おじさんの姪っ子さんから聞いていたんですが」
「分かるかなあ。とにかく行ってみましょう」
「そうですね」
いくつもお墓があって、名前を確認するんですが…。
「小椋さん、こっちも小椋さん。やっぱり、この辺は小椋さんが多いんですよ」
「そうなんですか、って言うか全部小椋さんですよ」
「困りましたね、うーん、私もどれか分からないなあ」
「今回は諦めますか。また来ますよ」
「いや、せっかく来たので。お隣さんに聞いてきます」
と待つこと数分。
「一緒に来てくれました」
「ここですよ」
「ありがとうございました」
「いえいえ、私たちもショックでねえ。毎日ばあちゃんがお茶してたしねえ」
ご近所の皆さんにも親しまれていたんですね。
無事にお墓参りを済ませました。
訪れる度に美味しい水を出してくれたおじさん。

「ビールを冷やすのにちょうどいんだよ」

近くの湧き水を集落全体に引いているそうです。
「お水、頂いていきますね」
すごく柔らかくて美味しい水なんです。
帰ってからコーヒーで飲んでみます。
本当はおじさんに勧められた山桜の時期に来たかったけど、少し遅かったです。
山桜はまた改めて。
でも来られてよかった。
おじさん、色々とありがとうございました。
そして素敵な器、ありがとうございました。
大切に使わせてもらいます。
さて、急いで帰らないと。
野口さんとおじさんのところで時間を使いすぎました。
夕方4時か5時には店に戻るつもりが、7時位になっちゃうかも。
がんばって走るか。
終わり